No. 1  ·  Spring 2026

When Tigers Smoked

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Flash Fiction · Historical · Japanese

慶長十一年七月 肥後国菊池川記

慶長十一年七月十二日の夜、肥後の海辺において、浜奉行より奇怪なる事ども注進あり。

暴風雨のさなか、雷鳴天地に轟き、海より龍のごときもの天へ昇るを見たりという。また、その折、何ものか岸へ上がる姿も見届けたり。

幸い風雨による大きな損害はなかりしものの、連日の雨により菊池川は大いに増水し、堤は今にも破れんばかりとなれり。

されど、ここに記すは洪水のことにあらず。

漁師ら、水面に奇怪なるものを見るという。初めは浮き石と思われしが、やがて形を現せり。

百姓次郎、そのもの牛一頭をくわえ、川へ引きずり込むを目撃す。その頭は龍に似たり。牛よりなお大きく見えたりという。

二旬のうち牛三頭失われたり。

漁に出る者、そのもの水底より現れ、小舟の周りを巡り、再び深みに没するを幾度も見たり。この日より漁師らは網を打つことをやめたり。

里人ら神職を招き、「我らいかなる罪を犯し、この龍神の怒りを招きたるや。」と恐れ、祈祷を施したる米と酒を川辺へ供え、「願わくは我らの過ちを赦し、来たりしところへ帰り給え。」と祈れり。

その後、二十人余の村人、加藤殿へ訴え出づ。

百姓五郎が娘、弓。齢いまだ六つに満たず。獣に奪われたり。もはや牛のみならず、人命までも失われたるなり。

加藤殿、「童を捜し、その獣をも見出すべし。」と命ぜらる。

二日後、朝日に照らされ、そのもの姿を現せり。

童にあらず。獣なり。

大口を開き、人々を威すがごとく動かず。身には緑の鱗あり。長さ五間ほど。歯は絵巻に描かるる龍のごとし。進まず、退かず。当国に棲む魚・蛇・獣、いずれにも似ず。

やがて夏雨尽きし頃、その獣また姿を消せり。

人々は、あの海龍とともに肥後の浜へ来たり、また同じく帰りしものなりと言い伝えたり。

その後の記録なし。

Record of the Kikuchi River, Higo Province, Seventh Month of Keichō Eleven. — Unsigned.

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About This Piece

A magistrate's record from Keichō Eleven — 1606 — Higo Province, Japan. Written in classical Japanese. No author is named. No further account survives.

Wani. The Japanese word for crocodile, and in ancient texts, for sea dragons and great sea serpents. The character combines 虫 (creature) and 咢 (jaw).